軟腐病


軟腐病の症状
ジャーマンアイリスは比較的手がかからずに大輪の見事な花を毎年咲かせてくれますが、軟腐病は宿敵とも言える存在です。基本的に予防薬も特効薬もありません。

この病気に罹ると、病名が示しているように根茎(芋)の部分が軟らかくなって内部がドロドロに溶け特有のいやな臭いを発します。下の画像のように葉の付け根付近からの発症が多いです。前日まで元気そうに見えても翌日葉の付け根付近から葉がバッタリ倒れていたりします。


この状態では中はかなり腐っています。


雨の後や水撒き後ではないのに葉が部分的に濡れているように見えることもあります。
(以上の画像3枚は群馬県の設楽さんにご提供頂きました)

初期症状としては、お芋の背中が部分的に陥没したり、葉の付け根と反対側あたりから急にシワが寄って見る見る進行したりします。
(子株が生長する時に、花の終わった親株がだんだんにシワシワになりますが、ちょと見分けがつき難いです)
あまりに敏感になりすぎて病気じゃない株まで抜いてしまう事もしょっちゅうですが、早めに手を打てば病気の進行をくい止める事ができますし、他の株への感染も押さえることが出来ます。

発症時期
高温多湿時に発症が顕著になるので、梅雨や秋雨は頭の痛い時期です。

軟腐病は30℃前後の高温・多湿時に発症することが多く、この条件下で雨が続いた場合、一株発症すると一日1m程度の速さで周りに感染して行くと言われています。

発見したら
とにかく一刻も早く周辺の土ごと大きく掘り上げて、土はアグリマイシン等で消毒するか、焼くか処分します。

株は流水でよく洗い(決して溜水で洗わないこと!)、ヌメヌメしているところは全て取り除き、後はカッターなどで罹患している部分を全て切除してゆきます。家庭用の塩素系の液体漂白剤(ハイター/キッチンハイターなど)を8倍〜10倍に薄め10〜15分ほど患部を浸します。

その後、流水でよく濯ぎ1週間程度乾燥させてから再び植え付けます。

軟腐病は感染力が強いので、掘り上げに使った用具や処置に使ったカッターなどは、アグリマイシンや漂白剤で必ず消毒しましょう!
(カッターなどはハイターにつけ込むとサビますのでお気を付け下さい。 )
予防について
軟腐病菌はいわゆるバクテリアの一種で、株に傷等がない限りは中に入り込むことは出来ません。ただし、株分け時や草むしり、害虫等によりキズがつけばそこから入り込んで一気に繁殖します。

軟腐病の完璧な予防方法はまだ見つかっていません。ただし、植え付け時または植え付け後一月目あたりと翌年の春先にアグリマイシンの1,000〜1,500倍水溶液を散布すると、発症抑止効果があると言われています。

軟腐病は湿った土壌では1日に1m以上も広がりますので、発症株の周辺土壌もアグリマイシン等で殺菌しておくにこしたことはありません。また、トリクロサンを撒くことにより、軟腐病菌が出す酵素(これによって株が溶ける)を出させなくする効果が確認されています。
トリクロサンは家庭用のハンドソープ(キレイキレイ/ライオン、クリアレックス/三共梶Aなど)に含まれている消毒剤です。 希釈倍率は不明ですが、適当に薄めて撒いてみて下さい。
春先か梅雨前あたりに散布するのが良いと思われます。

発症株に直接トリクロサンを含むハンドソープの原液をかけて進行が止まった例も報告されています。
ただし、トリクロサンには太陽光に当たるとダイオキシンを発生させるという報告もありますので、
家庭菜園などをなさっている場所にはAliceはお奨めしません。
トリクロサンに関する情報は、
左メニューのBBS Previous Logを押し、過去ログ一覧の下から3段目を開いた頁の、上から3つ目のスレッドでmasakatoさんが詳しく記述して下さっています。興味のある方はそちらも是非読んでみて下さい。

根茎部分はなるべく乾燥させておくにこしたことはありません。そのため、まめに根茎周辺の雑草を取り除きましょう。雑草の根元で軟腐病菌が繁殖します。また、古枯葉も取り除き、葉の根元がジメジメしないように気を付けましょう。

ただし、雨の降る直前はやめておいた方がよいと思います。葉を取り除いた時に出来たキズが乾かないうちに雨で泥ハネしたら、感染の原因になる可能性もありますから…。


その他の病気

ボトリチス根茎腐敗病
チューリップや水仙など多くの球根植物に感染する病気です。

海外輸入株に見られることも多いので、輸入株は必ず殺菌剤か家庭用液体漂白剤(ハイター/キッチンハイター等)を10倍程度に薄めたものに15〜20分程度つけ込んでから植えることをお奨めします。

白絹病

この病気は、どちらかと言うとジャーマンアイリスのような根茎アイリスよりは、ダッチアイリスのような球根アイリスに見られる病気ですが、ジャーマンアイリスで発症する場合もありますし、最初は軟腐病のような症状をみせますので一応記載しておくことにしました。

原因菌は殆どのキノコ類と同じ担子菌類の一種です。

症状としては、発生すると葉が黄色くなり、進行すると葉は根元から茶色に変色し枯れて行きます。
株や周りの地面にカビが生え白い糸で覆われたようになり、そのまま株は腐って行きます。そのうちに小さなタネのような白や褐色の粒「菌核」が多数あらわれ白い糸状の菌糸を張り巡らせます。
この「菌核」は菌糸のかたまりで、この粒状態で越冬し、このため土壌中で長く残り一度発症した場所では毎年発症します。

発生時期は、 気温が高くなる初夏〜初秋。発生し易い温度は30〜35℃ 。 菌核がよく発芽する温度は15〜30℃です。

この原因菌の棲息域は地表から深さ5cm程度ですから、天地返しをするのも一つの手です。
軟腐病対策のように土壌の排水を良くし、古枯葉をまめに取る事も多湿にさせないために必要です。
薬剤はベンレートあたりが手軽で良いでしょう。

腐ってしまったら捨てるしかありませんが、決してその辺の地面に放り投げたりせず、焼却するかきちんと処分しましょう。症状が軽い場合は病葉を取り除き患部や周辺部にベンレート等を施します。
抜いた周辺の土壌もベンレート等の土壌消毒剤できちんと消毒します。
土壌消毒剤には有効菌などの記載がありますから、合ったものを選びましょう。

この菌は花菖蒲や菊といった草花やジャガイモなどの作物にも寄生し発症させます。近くでこのような症状が見えたら、すぐに対処しましょう。